お目当てはおでんだ。
お客は「S」のレジカウンターにあるおでんコーナーに一直線に向かう。
「大根3つ、しらたき2つ、がんも1つ、卵は4つ……」。
みるみるうちに鍋がおでんでいっぱいになる。
噂を聞きつけたテレビ局の撮影班(クルー)が真偽のほどを確かめようと長丁場を覚悟して待機していたら、ほんの数分でお鍋を手にしたお客が入ってきた。
その後もあまり時間を置かず、次々とお鍋持参の客がやってくるのでクルーが拍子抜けしたほどだ。
S本部によると、葛西地区のおでんの売上高は全国一だという。
お弁当や総菜と同じファストフードの分類に入るおでん。
他のファストフードとの違いは、はじめから温かな状態で販売されており、即食性があることだ。
店員の店内での仕込みの優劣によって昧も変わるから、ヒーターの温度管理や出汁の継ぎ足しのタイミングなどのノウハウも求められる。
店のレベル、店員1人ひとりのおでんに対する意識の差が売り上げの差になる。
おでんは素材そのものがシンプルで、必ずしも加工度は高くない。
総菜やお弁当、おにぎりに比べて品質アップなどの創意工夫の余地が少ないと思われがちだが、Sにかかると、いろんな改善、改良策が出てくる。
まず、2000年ころから、おでん料理の専門家を招いてSのおでんと専門店のおでんの比較を始めた。
「いろんな軸でおでんを検討する」という考えは、お弁当や総菜類などの商品開発となんら変わらない。
味の染み方やおでん種の歯応え、噛み応えを知るために測定器を持ち込んで検証した。
人間が大根をかみ切るときの力まで推測して、実験を繰り返した。
おでんの種は、あらかじめ工場で加工され、下処理は店に配送される前に出来ている。
約80度に温めたおでん汁におでんの種を入れて販売するが、約30分でおでんがおいしく食べられるように種にいろいろな仕掛けが隠されている。
大根は工場で下茄でを施すことで味の劣化のもとになる灰汁を取り除いた。
大根の表面には包丁で細かな溝を作る。
おでん汁を短時間で染み込ますための工夫だ。
おでん汁器にきれいに入るように大根の大きさも統一する。
直径6センチの筒に大根を通してくり抜いていく。
大根の皮に近い部分は味が染み込みにくく、おでんにはふさわしくないからである。
使われない大根は漬物としてSのお弁当などに使われる。
白滝にも同様に縦に細かな切れ目が入っている。
白滝の製法は特許を取得済みだ。
肉まんのような形をしてぷかぷか浮いているはんぺん(商品名、かまくらはんぺん)は、はんぺん本来の原料だったサメの肉を使用。
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